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2005年06月21日

アンとニオイの木

なんとなくタイトルを思いついて書いた。
内容はなんでもよかった。
今は反省している。


長い上に面白いもんでも無いので、お暇な方だけ続きをどうぞ。

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アンは、小さな女の子。
ドン臭くて卑屈な厄介者。
いつも叱られてばかり。

嫌な事があると、決まって森へやってくる。
森の中はいいニオイで一杯で、アンの事も優しく包んでくれるから。

森の真ん中には、大きな木があります。
その木はとってもいいニオイで、ニオイの木と呼ばれて、愛されていました。
ニオイの木の木陰には、いつも動物達が沢山いました。
アンは動物達に混ざってお昼寝するのが大好きです。

アンはニオイの木に語りかけます。
「あなたはとってもいいニオイね。」
「そうかい?」
「ええ、あなたのニオイを嗅ぐと、安らかで幸せな気分になるわ。」
「そうかい、それは良かった。」
ニオイの木はそう言って微笑みました。

「でも、僕はニオイに自信が無いんだ。」
「どうして?こんなにいいニオイなのに。」
「自分のニオイが分からないんだ。」
「まぁ!」
「フクロウが鼻に巣を作っちゃって、鼻が利かないんだ。」
「じゃあ、私がフクロウの巣を片付けてあげる。」
「そんな事をしたらフクロウが困っちゃうよ。」
ニオイの木は困ったように微笑みました。

「うーん・・・。」
少し考えて、アンはいい事を思いつきました。

「だったら、私があなたの鼻になる。」
「君が僕の鼻になる?」
「そう、私があなたの鼻になって、あなたのニオイを教えてあげる。」

その日から毎日、アンはニオイの木を訪れ、彼のニオイを教えてあげました。

「どうだいアン。僕はいいニオイかい?」
「とってもいいニオイよ。でも、少し薄いわ。」
「薄いかい?」
「ええ、もっとニオイを強くしなきゃ、森一杯には広がらないわ。」

ニオイの木は、アンに言われるままにニオイを強くしていきます。

「どうだいアン。僕はいいニオイかい?」
「とってもいいニオイよ。でも、まだ薄いわ。」
「薄いかい?」
「ええ、もっとニオイを強くして、世界中の人を幸せにするの。」

いつしかニオイの木は、鼻が曲がるほどのとても嫌なニオイになってしまいました。
森の中は嫌なニオイで一杯で、あんなに居た動物達も、森から逃げて行きました。

「アン、動物達がいないんだ。」
「ニオイが遠くまで届いたからよ。どこまで届いたのか、動物達は確かめてるの。」
「そうか。でも、少し寂しいね。」
「私がいるじゃない。」

嫌なニオイは風に運ばれ、町にも拡がっていきました。
水にもニオイが溶け込んで、臭くてまずくて飲めた物ではありません。

アンの計画は成功です。
アンは、町の人に嫌がらせをしたかったのです。
その為に、ニオイの木を利用したのです。

ある日、ニオイの木の下へ息を切らせたアンがやって来ました。
怒った町の人たちに追われて逃げてきたのです。
アンは、ここなら、臭くて町の人も追ってこないだろうと考えていました。
ニオイの木は微笑みながらアンに尋ねます。
「アン、今日もニオイを教えてくれるかい?」
「やっぱりあんただったんだね!」
答えたのはアンではありませんでした。

洗濯バサミで鼻を挟んだおばさんが、真っ赤な顔でアンを睨んでいます。
その後ろから町の人達がゾロゾロとやって来ました。
鼻を洗濯バサミで止めた人、マスクをした人、顔に手ぬぐいを巻いた人。
顔は隠れていても、はっきりと怒っている事が分かるぐらい皆カンカンです。

洗濯バサミで鼻を挟んだおばさんは、篭った声で言いました。
「アン、ニオイの木をこんなにクサくしたのはあんただね!」
「知らない!私じゃ無い!!」
「じゃあどうしてあんたは平気なんだい?あんたはこのニオイに慣れてるんじゃないかい?」
「違う!私じゃ無いの!」
「嘘をお言いでないよ!毎日森に来てたのはあんただけなんだよ!」
「知らない!知らない!」
「とぼけたって無駄だよ。あんたの体から、その木のニオイがプンプンしてるんだよ!!」
叫ぶやいなや、石を拾ってアンにぶつけました。
「痛い!」

町の人達は、口々に叫びながらアンに石をぶつけます。
「お前のせいで、窓も開けられない!」
「あんたのせいで洗濯物が外に干せないじゃない!」
「料理がまずくなってお客が来ないじゃないか!」
「どうしていつも、人の足ばかり引っ張るんだ!」
町の人達は、足元の石が無くなるまで、アンに石を投げ続けました。

「痛い!痛い!痛い!」
泣き叫ぶアンに洗濯バサミのおばさんが近づきます。
「なんだい、その目は。自分が悪い事をしたくせに被害者面すんじゃないよ!」
バシッ!
「あんたはいつもそうだね。自分のドン臭さを棚に上げて、泣き言ばかり!」
バシッ!
「失敗しても謝らない。挙句の果てには逆恨みかい!」
バシッ!バシッ!バシッ!
洗濯バサミのおばさんは、持っていた杖で何回もアンを叩きました。

とうとうアンは死んでしまいました。
ニオイの木の根元で、ぐったりとうずくまって、冷たくなっていきました。

流石に町の人達もやりすぎだと思いザワめきます。
「うろたえるんじゃないよ!」
洗濯バサミのおばさんは、町の人を一喝します。
「さぁ、このクサい木と一緒に燃やしちまうよ!」
そう言って、ニオイの木に火を放ちました。
「全く、あんなにいいニオイだったのに、こんなにしちまいやがって。」

火は落ち葉を飲み込み、たちまちのうちに大きな炎となりました。
すると、燃えるニオイの木から、とてつもなく強くて、とてつもなく嫌なニオイが放たれました。
町の人達は、ニオイが目に染みて、とても目を開けていられません。
ここから早く逃げたいのに、溢れる涙で前が見えません。
燃えるニオイの木は、アンに語りかけました。
「アン、皆が君の為に泣いているよ。」

炎は全てを包んでいきます。
洗濯バサミのおばさんも。
逃げ切れなかった町の人達も。
冷たくなったアンも。

燃え盛る炎の中でニオイの木は、アンに語りかけました。
「アン、君は僕の花になる。」
「その花は、とっても可愛くて、とっても綺麗で、きっと皆が好きになってくれるよ。」

やがて春が訪れました。
真っ黒に焼けたニオイの木は、それでもまだ生きていました。
炭の間から枝を伸ばし、そして花を咲かせました。

アン。
アンの花は小さくて可愛い。
アン。
アンの花は白くて綺麗。
でもね、
アン。
アンの花はとてもとても嫌なニオイで、誰も好きになってはくれませんでした。


おわり。
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あとがき:
絵本風にしようと思ったら、イソップ童話風になりました。

投稿者 Suya : 2005年06月21日 19:15

コメント

ちょっと切なくなるいい話ですね
アンの花、いい匂いだったら救われたのに。・゚・(ノД`)・゚・。
でも猪木面の木を思い浮かべると少し笑えます

投稿者 HIRA : 2005年06月22日 20:25

いやぁ、なんとなく因果応報をテーマとして考えたので、悪い事して救われちゃ駄目だろうと思って。
しかし罰は十分に受けてる訳で、救われなさすぎな気もしてます・・・。

自分も絵本をイメージすると、木が猪木面になってしまいますw
スタートがそこなので、仕方ないですけどw

投稿者 スーヤ : 2005年06月22日 22:34

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